診療報酬債権ファクタリング・そのメリットとデメリット

診療報酬債権ファクタリングの仕組み

診療報酬債権のファクタリングは、証券会社・銀行・ノンバンク等のファクタリング事業者に診療報酬債権を譲渡し、資金調達する仕組みである。

社会保険診療報酬支払基金によれば、2009(平成21)年度の診療報酬債権譲渡件数は月平均約4,500件(右図参照)であり、増加の傾向が見て取れる。

割引料率はファクタリング事業者によってまた個々の審査によって異なるケースがあるが、回収が確実な債権であるため本来低めに設定されているのが普通である。月利で0.5%程度から1%台後半まであるが、年利に換算すると通常金融機関から受ける融資の利率の方が低いだろう。

なお、診療報酬債権のほか、介護報酬債権、調剤報酬債権についてもファクタリングが可能であり、実際に行われている。
便宜上、以下これらすべてをまとめて診療報酬債権と呼ぶことにする。

さて、診療報酬債権の全額すべてをファクタリングできるわけではない。つまり不動産担保融資などと同様、いわゆる掛目が存在する。
この掛目はファクタリング事業者によってやや異なる。社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会に診療報酬の請求をした後、支払審査によって請求額の減額が起こるケースがあるが、このために掛目が設定されており、個々の審査によって変動する場合もある。
おおまかには80%程度の掛目が一般的であるが、中には審査次第ではあるが90%以上の掛目を設定できるファクタリング事業者も存在する。

仮に掛目が80%だとした場合、ファクタリング事業者は診療報酬譲渡の対価としてその80%を医療機関や介護施設に対して支払うこととなる。
のちファクタリング事業者が社会保険診療報酬支払基金等から支払いを受けてから残額の20%を医療機関に支払う形で完了する。

この取引が繰り返されていくわけだが、診療報酬は支払いまで2か月かかるため、ファクタリングを導入した場合初回は2か月分の診療報酬を一度に手に入れることができる。

診療報酬債権ファクタリングのメリット

  • 初回は2か月分の診療報酬が一度に入金されるため、手元資金を厚くすることができる。
  • 融資ではなく債権譲渡であること、またこの債権は事実上回収が確実であることから審査はゆるく、ファクタリング事業者によっては債務超過状態でも審査に通る。

診療報酬債権ファクタリングのデメリット

  • 銀行関係
    ファクタリングを実施した場合、入金はファクタリング事業者から行われることになる。よって取引銀行は当然資金繰りが悪化したことに気が付く。
    ファクタリングは将来の現金を先食いする行為であり、この点の理解が必要である。
  • ファクタリングの中止は難しい
    ファクタリングの中止が難しいのは、中止した場合診療報酬の20%しか入らない月が発生するためである。この資金を用意しておかなければ中止できないということになる。

ファクタリングが有効なケース

診療報酬債権は回収が確実な点できわめて優良な資産である。よって金融機関からの融資が得られない状況になってしまってもこの資産を利用して資金調達することは可能である。
先述したように、債務超過のケース、あるいは税金の滞納があるケースでもファクタリングは可能である。万一経営危機に陥っても、最後の手段としてファクタリングを利用することができるだろう。

ファクタリングが無用なケース

ファクタリングによって調達できるのは最大2か月分である。よってこの2か月分と同額程度の融資が金融機関から受けられるのであればそれを選択した方が金利負担は低い。この場合ファクタリングを行う必要はないだろう。

ファクタリングと同時に必要なこと

医療機関は基本的に診療報酬が安定的に入ってくるため、運転資金は本来ここで賄えるはずである。しかし赤字経営になるとそうはいかなくなり、運転資金が必要となる。
逆の言い方をすれば、医療機関が運転資金不足に陥るというのはそもそも赤字であることが原因のケースが多い。
また融資が受けられるなら問題ないが、それが出来ない場合にファクタリングが選択される。つまり、ファクタリングを行うということは相当程度経営が悪化しているということを示唆している。

ファクタリングは将来の現金を先食いする行為である。この状況から脱却するためには、未来の現金を生み出せるほどの経営改善が求められる。

事実上ファクタリングしか選択の余地がない場合はかなり突っ込んだ経営改善、つまり事業再生が必要な段階に来たと認識した方がよいだろう。

その他の資金調達方法(医療機関)

その他の資金調達方法(医療機関)医療機関債

税引前純損益が3期連続黒字など財務内容が良好な医療法人であれば、規模にかかわらず利用できる。極端な話だが、医師一人の医療法人であっても利用できるということである。
資金の出し手は、地域住民や銀行等で、証券会社を介在させることなく医療法人が直接資金集めを行う。比較的小規模(数千万円〜5億円程度)の調達に利用されている。 公認会計士による外部監査を受けない場合は、発行総額1億円未満かつ購入人数49人以下という条件が付くが、調達資金の規模を考えても比較的小規模な医療法人による利用であることを考えれば問題はないだろう。
一般的な中小企業による少人数私募債や出資募集と異なり、院内にポスターを貼ったり、ホームページに発行要項を掲載して広く勧誘を行うことが可能である。

その他の資金調達方法(医療機関)社会医療法人債

債券市場で広く取引される社債券の一つとして位置づけられるため、医療機関債と異なり金融商品取引法の有価証券に該当する。
公募、プロ私募、少人数私募の3つの募集方式がある。公募の場合は主幹事証券の選定も必要であり、はじめてであればおおよそ半年前から動き出す必要があるだろう。
プロ私募、少人数私募債の場合は主幹事証券の選定は必要ないが、銀行若しくは保証協会による保証付私募債で発行することが一般的なため、保証料の支払いが必要となる。よって公募の方がトータルコストでは安くなるということが起こる。

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医療機関の資金調達、再建コンサルタント

コンサルタント:増子 貴仁 Cross&Crown LLC代表。
トヨタ自動車を経てクロスアンドクラウンコンサルティングを設立、1年で法人成り。平成20年12月株式会社アダムに合流しクロスアンドクラウン株式会社設立に参加。web事業なども展開、経営者向けの雑誌などにも寄稿している。30才のときに慶應義塾大学経済学部へ。

2009年には大阪オフィスを開設、全国の案件に対応。金融機関元役員などもコンサルタントとして招聘し、弁護士、公認会計士、税理士を始め各士業との連携を構築、医療機関、介護施設の資金調達や再建、M&Aも手掛ける。銀行、証券会社、ファンド、投資銀行等へのネットワークを構築している。年間100件以上の新規相談を扱っている。

執筆

  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2009年8月号 タイトル:「ファクタリングという調達手段」
  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2009年6月号 タイトル:「攻めながら退く事業再生」
  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2009年5月号 タイトル:「資金繰りに困った中小企業が陥る問題点」
  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2010年8月号 速習 タイトル:「トップの理念がサービスの質になる」
  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2011年4月号 速習 タイトル:「時間を円で管理する」
  • 中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2011年11月号 タイトル:「アイデアが湧き出る発想法・それを実践するための手法」

ご相談お申し込みの方には、中小企業経営研究会:月刊近代中小企業 2009年8月号 タイトル:「ファクタリングという調達手段」(執筆:弊社代表 増子 貴仁)の記事を差し上げております。

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